(日本語) 日本血栓止血学会学術推進委員会 (SPC) 2016 SPCシンポジウム演題募集のご案内


日本血栓止血学会 会員の皆様へ

第38回日本血栓止血学会学術集会(2016年6月16日-6月18日、嶋 緑倫 会長、奈良)では、6月16日の午後にSPCシンポジウムを開催いたします。今回はSPC委員会指定の3テーマと会員応募の1テーマで実施します。SPCシンポジウムでの発表を希望される方は、先ず、演者、演題名、抄録などを一般演題としてオンライン登録してください。発表形式選択欄では希望のSPCシンポジウムテーマをお選びください。また、同時に、SPCシンポジウムでの発表を希望する旨を学会事務局(headquarters@www.jsth.org)まで、選定テーマ、演者、演題名、登録番号、抄録をe-mailでご連絡下さい。確認のためにFAX(03-6912-2896)でもお送り下さい。座長が中心となり各テーマに相応しい演題を採用させていただきます。

 なお、採択された演題は、英文・字数 (半角) 2940字以内で抄録を作成し、学会事務局(headquarters@www.jsth.org)までお送り下さい。採用されなかった演題は、一般演題としてプログラム委員会で取り扱います。不採用の場合の発表形式は、口演発表、ポスター発表、口演・ポスターの両方の何れかを選んでUMINで登録をお願い致します。

奮って応募くださるようお願い申し上げます。

SPC委員会
委員長 一瀬 白帝

2016 SPCシンポジウムのテーマ

1. 慢性炎症と絡まる生活習慣病と血管・血栓(血管バイオロジー部会/炎症・免疫と血栓部会~共同開催~)-Adult common diseases based on chronic inflammation and vascular dysfunction-
2. 血小板研究の多様な展開(血小板バイオロジー部会)
-Progress in various aspects of platelet research-
3. 血液凝固とその制御機構の最近の話題(凝固とその制御部会)
-Current topics on blood coagulation and its regulatory mechanism-
4.外傷性凝固障害に迫る!!(公募テーマ)
-Press Trauma-Induced Coagulopathy Close!!

各シンポジウム概要

1. 慢性炎症と絡まる生活習慣病と血管・血栓 -Adult common diseases based on chronic inflammation and vascular dysfunction-
座長: 惣宇利正善(山形大学医学部分子病態学)
    西村 智 (自治医科大学分子病態治療研究センター 分子病態部)

テーマの目的と内容:
生活習慣病の背景には慢性炎症機転が存在し、血管機能異常や血栓形成に至ると考えられている。Ross仮説に代表される動脈硬化と炎症の関連に加えて、近年、肥満、糖尿病、腎不全、慢性閉塞性肺疾患、皮膚炎、炎症性腸疾患、など、多岐の疾患にでも慢性炎症の寄与が示唆される。組織の慢性炎症は血管内皮および間質に波及し、血栓性を亢進させ全身の病態を増幅する。
脂肪組織と肥満の関連を例にあげる。従来、脂肪組織の肥満における役割は必ずしも明らかではなく、脂肪組織が臓器としてどのように機能異常を起こすのか、いかに全身のインスリン抵抗性に寄与するかは十分解明されているとは言えなかった。近年、肥満脂肪組織への炎症性マクロファージやT細胞の浸潤が報告され、肥満した脂肪組織では慢性炎症と組織リモデリングから積極的に全身の代謝性疾患に寄与していることが明らかになった。さらに、脂肪細胞・間質組織の慢性炎症とともに、末梢血管中の血小板も活性化され内皮・白血球と相互作用している。これらの多細胞の異常なクロストークが炎症を増幅していると考えられており、さらに、これらのクロストークを制御し内臓肥満そのものや全身のインスリン抵抗性を治療するこころみもなされている。このように生活習慣病病態の理解のためには、慢性炎症に伴う生体内での細胞動態の異常、特に免疫細胞の局所での応答について、多面的なアプローチも必要である。
本シンポジウムでは、領域横断的に、血栓・止血、慢性炎症、血管、を融合した視点から、生活習慣病病態への説明を試みる。疾患領域を限らず、免疫・炎症の観点からも、さらに、血管・血栓領域研究者からも活発な議論を期待したい。

2. 血小板研究の多様な展開 -Progress in various aspects of platelet research-
座長:柏木浩和(大阪大学医学部血液腫瘍内科)
   井上克枝(山梨大学医学部臨床検査医学講座)

テーマの目的と内容:
血小板は一次止血および動脈血栓形成に中心的な役割を果たしていることはいうまでもなく、その分子メカニズムを解明することは従来から最も重要な研究課題である。近年のノックアウトマウスを用いた検討は多くの知見をもたらしてきたが、ヒトとマウスの血小板活性化機構は必ずしも一致しておらず、出血傾向をもつ患者の詳細な検討の重要性は現在も変わっていない。また極めて特殊かつ複雑な血小板産生機構を明らかにすることは、生物学的な興味のみならず血小板減少症あるいは増多症の病態解明およびその治療に向けて重要な研究領域であるが、意外な分子が巨核球増生に関与している可能性がある。一方で、近年、血小板は、血栓・止血以外に臓器発生・再生、感染症と免疫機構など幅広い領域において生理的に重要な枠割を果たしていることが明らかにされてきている。本シンポジウムでは、従来からの血小板研究の中心課題である、血小板活性化の分子機構や血小板産生機構の解明に加えて、臓器再生における血小板の新たな役割や凝固反応における血小板関与に関する新たな知見など、広がりつつある血小板研究の多様な領域における最近の注目すべき成果を広く学会員に披露していただくことを目的とする。特に血小板の新たな生理機能に関する研究に関して積極的に本シンポで取り上げたいと考えている。

3. 血液凝固とその制御機構の最近の話題-Current topics on blood coagulation and its regulatory mechanism-
座長:林 辰弥(三重県立看護大学看護学部)
野上恵嗣(奈良県立医科大学小児科)

テーマの目的と内容:
血管破綻時は血管外への血液漏出を防ぐために血管損傷部位で速やかな止血凝固機構が作働する。一方、健常部位での血管内には血栓形成を生じることなく、さらに血管障害による出血部位においても過剰な血液凝固反応が生じないように、凝固阻止機構が作働することにより血流流動性を維持している。このように血管破綻時の止血凝固機序と血管内での血液流動性の維持が生体内ホメオスタシスおよび生命維持には不可欠である。これらの異常は易出血性を呈することもあり、逆に易血栓性も呈することにもなり、最悪な場合、致命的な出血または血栓症を引き起こすことがある。これら止血凝固制御機序については、当初から精力的に基礎的研究が行われ、様々な凝固関連制御因子がこれら機序に関与していることが明らかにされて十分発展してきた。そして、凝固異常症の発見や分子機序解明に大きく貢献してきた。しかしながら従来の研究は、凝固因子ならびに凝固制御因子の相互反応・作用の解明は主にin vitro系で研究されてきた。しかし近年、この制御機構には血管、血小板、凝固因子ならびに抗凝固因子、線溶系因子が時間的にも空間的にも密接に巧みに絡み合うことにより成立していることと理解されてきている。このことにより、従来そしてさらに新たな止血凝固機序の概念も確立してきている。本シンポジウムでは、このように日々発展していく血栓止血学における止血凝固とその制御に関わる研究領域において、日本発のupdateな情報を幅広く取り上げることにより、更なる凝固とその制御機構の解明を目指した基礎研究の活性化を促し、さらには臨床現場における血栓止血異常症の新たな発見や治療法および予防法の開発・確立へとつながっていくことを大いに期待する。

4.外傷性凝固障害に迫る!!-Press Trauma-Induced Coagulopathy Close!!
座長:岡本好司(北九州市立八幡病院消化器・肝臓病センター)
   丸藤 哲(北海道大学医学研究科救急医学)

テーマの目的と内容:
事故などの外傷は、本邦において全死因の第6位であり、現役世代の若者の死因としてはもっと高い。これらの領域の医学的進歩は高齢化を迎え若い世代が少なくなっていく我が国では喫緊の課題である。
救急医や外科医にとって、外傷に伴う大量危機的出血や外傷性凝固異常は、少しずつ病態や対処法が解明されつつあるものの、未だ満足のいくものではない。アメリカ合衆国では、国防総省などが資金を提供し、この分野での研究を国を挙げて押し進めている。また、2015年の国際血栓止血学会では、Trauma-induced Coagulopathyと題したSTATE-OF-THE-ART LECRURESで3者の講演があった。特に、凝固領域の泰斗であるK. Mann教授の講演では、Trans-Agency Consortium for Trauma-induced Coagulopathy (TACTIC)についての発表がなされ、その取り組みや今後の方針など11の研究センター21名の専門家による12の基礎研究プロジェクトを推進していることが報告されている。本邦でも、救急領域の専門家が個々に様々な研究成果を今までにも報告しており、国際的にも認められてきた。本学会は、基礎領域から臨床までの幅広い専門家が集う学会であり、外傷性危機的出血や外傷性凝固異常において本邦に置ける基礎と臨床研究の融合を実現出来る場であると確信される。このような症例の救命に貢献すべく本シンポジウムを開催したい。指定演者だけではなく、公募にて独創性が高くこの領域に発展性が繋げられるような演題を採択し、我が国のこの領域に対するjoint strategyの第一歩としたい。